緑の中に潜むもの New 2021年07月2日
少し前からピアノ教室がある建物のすぐ傍に、「ヘビ出没注意!」という注意書きが掲示されています。
それに気づいた生徒さん方は、好奇心より「どのくらい大きいの?」など様々な質問を投げかけました。
実は、私はまだ一度も目撃していません。そして、出会える瞬間を心待ちにしています。
というわけですから、彼らの出現については心配しないで下さい。
ご存知のとおり、昨今のような湿っぽい気候下で活動的になる野生動物って結構いますよね。
特に入間市は山々に囲まれていますから、豊かな自然が残っています。
ヘビは歓迎しませんが、自分の街の生態系システムが健全であるということを、私は喜ばしく感じています。
ウィステリア・ピアノクラスが入っている建物の管理組合は、つい昨日より植栽のリニューアルを実施しています。
教室を訪れる全ての方々がピアノを満喫すると同時に、緑に囲まれた美しい環境を堪能されるよう願っています。
孫悟空の頭にある輪 2021年05月18日
皆さんは、緊箍児(きんこじ)という名前を聞いたことはありますか?
孫悟空の頭にある輪のことです。
感情的に好き勝手に行動する孫悟空を制限するために、三蔵法師が呪文を唱えることによって彼を支配するためのグッズです。
この緊箍児はおとぎ話と思われがちですが、実は万人が持っている性質なのです。
皆が奔放に行動すると社会の秩序が乱れますから、緊箍児で頭を締め付けられる孫悟空のように、自らの行動を制限するといったことは、全ての人々が行っていることだと思います。
しかし、思考過多に陥ってしまうと、今度は情報や理論に振り回されて、自分のしたいことや本来のあり方を見失ってしまいます。
緊箍児に例えると、その状態は「思考という呪文を唱えることにより、孫悟空の輪っかに頭を締め付けられ行動できなくなった」と言うことが出来ます。
聞くところによると、頭蓋骨は23個の骨で成り立っており、それぞれの部分が拍動したり、骨自体が拡張したりしているのだそうです。(クラニオセイクラルセラピーにおける概念であって、医学的には頭蓋骨の23 個の骨は縫合が強固のため動かないとされています。)
考えすぎている時って、頭がキュッと締まった感覚というか、骨間にスペースが小さくなって頭の中の血流が悪くなっているような感じがしませんか?
それが首や肩、背中の緊張に繋がってしまいます。
長年ピアノに関わってきた中で感じていることですが、演奏家、教師、学習者(成人)の区別なく、緊張型の方々が非常に多いということです。
整体やマッサージに通っておられる方もよくお目見えします。
そういった外的なアプローチも良いですが、思考傾向を転換させることにより締まった頭蓋骨が緩んできます。
そして、身体が変わると思考のパターンも自ずから変わってきます。
心身の状態を整えてピアノに向かったとき、今まで聞こえなかった音が鮮明に聞こえてきます。これまで悪戦苦闘していた難しいパッセージが、魔法にかかったように楽に弾けることもあります。
アーユルヴェーダに学ぶ 2021年04月18日
昨年からのステイホームの影響で外出が少なくなったことで、食材をはじめとする料理に嵌ってしまいました!
その中で、特に感動した食物の一つに「グラスフェッドギー」というものがあります。
グラスフェッドというのは文字通り、牧草だけを食べて育ったという意味ですが、私はこれまでに「ギー」を食べたことがなかったので、この機会に購入してみました。
ギーは、アーユルヴェーダ(インドの医学)によると、「最も優れた油」になります。
脳の65%は脂肪なので、良質の油を摂取することは、健康のために重要であることは言うまでもありません。
身体の硬さをほぐし、濁った思考や精神を浄化する効果があるので、ピアノを弾く人にとっては魅力的ですよね。
これを長期的に、適量を守って常用することによって、長く健康に過ごせるのだそうです。
アーユルヴェーダの最古典“チャラカ・サンヒター”中には、ギーの効能について以下の記述があります。
 ・ギーは記憶力、理性と知性、精液、活力素、脂肪組織を増進させる
 ・ヴァータ、ピッタ、中毒、精神異常、肺病、不運、発熱を鎮静する
 ・ギーは最も優秀な油で、多数の薬力的効力を持つ
 ・古いギーは、てんかん、失神、肺結核、精神異常、中毒、発熱、女性性器、耳・頭の痛みを鎮静する
 ・ギーは毒物や錯乱を除去させる
 ・不調や病気を緩和・治療する
 ・体力・健康寿命を長くする
 ・感覚機能・治癒力を高め、やけどなどの治療にも良い 等等
「最も良い油がギー」だとすると、「最も良い糖はハチミツ」と言うことも出来ます。
そこで、ギーと非加熱のハチミツを、一緒に食卓に並べました。
それが美味しいのなんのって!!
まさに至福のひと時を味わいました。
・・・その夜、恐ろしいことを知りました。
アーユルヴェーダの中に、「蜂蜜とギーの同時摂取は『死をもたらす』」とあるのを読みました。
「蜂蜜と等量の雨水、蜂蜜と等量のギーを食すと死に至る」と書いてありました・・・。
まさか、雨水は飲みませんが、私は蜂蜜と等量かも知れないギーを食べましたっ!(*_*;
今のところ元気です・・・。
それぞれが良いものであっても、組み合わせが悪いと逆効果になるというのは、ピアノの練習にも相通ずることです。
よくプログラムされてない安易な訓練で、せっかくの音楽性を摘まないよう、適量を正しい方法で与えることによって長期的な結果を出す「アーユルヴェーダ」に倣いたいと思います。
音楽で頭が良くなるってホント? 2021年04月01日
音楽教育が聴覚以外の脳機能の発達に影響するということは、今日までの研究によって既に明らかになっています。
具体的には、ワーキングメモリー、自制心、柔軟性というもので、それらは「実行機能」と称されます。
米国ではこれらを実証するために、MRIを用いた試験が行われており、その結果、音楽の訓練が前頭葉の機能の発達を促すことが判明しています。
そればかりか、神経線維に対する変化や、側頭葉の可塑性も証明されております。
これらは、現段階においては、音楽教育を受けた子どもたちの脳においてのみ確認されていることです。
更には、「脳梁」と呼ばれる即ち、大脳半球間をつなぐパイプ部分の前方部分に関しても明らかな発達が見られるのだそうです。
音楽の訓練は、「ピッチ」「リズム」といった事柄に限定されているように思われがちですが、脳内のネットワークや認知機能に計り知れないほど大きな影響を与えています。
私たちが音楽から受けている恩恵は素晴らしいですね!
人工知能とピアノ教師 2021年02月22日
AI技術の急速な発達によって、私たちの仕事の有り方というものが大きく変化しつつあります。
「これから生き残る職業は何か?」という質問に対し、「生死に関わる分野と、芸術関係の仕事はなくならない。」という答が返ってきました。
次のような職種が、リストに上がりました。
 ・医師
 ・看護師
 ・保育士
 ・学校教員
 ・心理カウンセラー
 ・美容師
 ・ミュージシャン
 ・映画監督
 ・デザイナー・美術家
 ・トラベルコンダクター
ピアノ教師の仕事は、ミュージシャンであると同時に、保育士や学校教員と共通している部分があります。また、デザイナーや美術家のと同じく、常に創造性を要求されます。そして時には、良き心理カウンセラーであることも必要です。
つまり、ピアノ教師という職業は、これからも廃れることがないようです!
新型コロナウィルスの問題が始まって以来、ステージイベントに従事するミュージシャン、教室を経営されている先生の両方が、大きな困難に直面しました。
しかし、私たちの明るい未来を信じて、希望を持ちつつ頑張って行きたいですね!
「はた」と音楽 2021年02月13日
私の教室では、生徒さん方がよく自作曲を持って来ます。
子どもさん方は、ときどき数多くの「はた(音鈎)」が付いた音符を好んで用います。
「はた」が一本の音符は8分音符、二本になると16分音符・・・という風に、本数が増えると音価が短くなり、多くの場合、高速で演奏されることが意図されています。
生徒たちは面白がって、無数の「はた」を持つ音符を自作曲に採り入れ、「高速」「演奏不能」などといったタイトルをつけます。
32分音符、即ち3本の「はた」は、一般的な曲でよく使われていますが、5本の「はた」を持つ128分音符についてはご存知でしたか?
ベートーヴェンの悲愴ソナタOp.13第一楽章の中で、作曲家は128分音符を用いています。
また、アルカンも作品中に、多くの「はた」を持つ音群を含めています。
連鈎(複数の音符が繋がっているもの)の場合は直線で記されますが、単音の鈎は曲線なので、尻尾のような形になります。
子供たちはそういった音符の形を見たときに、「奇妙な虫みたいで変だ」と批判します。
しかし、音楽上の理由であれば、たくさん重なった奇妙な尻尾や虫たちを、積極的に用いて下さいね!
フレーフレー テクノロジー! フレーフレー姉妹!! 2021年02月05日
姉妹で私の教室に長く通っていらっしゃるご家庭から、「この春、九州に引っ越すことになった」との知らせを受けて悲しくなりました。
「これからもオンラインで先生のレッスンを受けたいです。」という言葉を聞いて、その悲しみは、瞬時に喜びに変わりました。
九州から遥か北にあっても、音楽を聞くことが出来るのは驚きですね。
新しい音楽に向けて 2021年01月01日
新年おめでとうございます。
今年は少し、「現代音楽」という語について考えてみたいと思っております。
この言葉から多くの方は、21世紀ー即ち「現代」の音楽より、むしろ「20世紀の音楽」を連想されるのではないでしょうか。
ですから、この用語を「無調音楽」という言葉に置き換えている人々もいます。
あらゆる作曲技法が駆使され尽くしたと言われている現代に生きている私たちは、様々な音楽を再評価したり、楽しんだりする特権に恵まれていますね。
クラシック音楽の終焉が来たと主張する人々がいる現代にあっても、新たな音楽の可能性を信じて、新しい年に突入したことを、歓喜と期待をもって受け止めたいと思っています。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
ヴァンパイアの歌 2020年12月31日
今年も残すところ、あと一日となりました。
皆さんはどのように、真夜中の12時をお迎えになりますか?
この時期には「蛍の光」の歌が流れることも多いですね。
これはAuld Lang Syneという有名なスコットランドの詩が元になっているものです。
直訳すると、「昔々」となります。
さて、ここで今年最後のクイズです。
問:大晦日に吸血鬼は何を歌うのでしょうか?
(ヒント:タイトルの一文字を変えてみて下さい。)
今年も一年間、生徒さん、親御さんをはじめ沢山の方々に支えられてきたことを、深く感謝いたします。
携帯が鳴ったらファゴットを演奏すべし! 2020年12月26日
コンサート会場に行ったら、必ず「携帯電話の電源をお切り下さい。」と案内されますね。切ったつもりでいたのに、着信音が鳴り出してしまったら、かなり焦ってしまうでしょう。
下記はある音楽ホールにあった貼り紙です。
「もしも貴方の携帯電話がコンサート中に鳴ったら、貴方はステージに上って、ファゴットを演奏するよう求められることになります。」
ファゴットは、演奏するのがとても難しいことで知られている楽器です。こんな羽目に陥ること考えると、会場に行った人々は皆、自分の携帯の電源が切られているかどうか再確認することでしょう。
こんなユーモアあふれるコンサートホールには、何度でも足を運びたくなりますね!
薄らぐことのない音楽への想い 2020年12月25日
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、公開イベントの開催が制限されてから数カ月が経ちました。
ステージ参加は、生徒さんに新たな目標を与えるものであるばかりか、他の演奏者と音楽を共有する貴重な機会ですね。
この時期にあって、私たちはこれらのことを、諦めるより他ないのでしょうか?
答は「ノー」です。
公開されているオンラインによる演奏や、録画によるコンサートを検索してみて下さい。
また、ご家族の中だけで発表会を行うことも、生徒さんにとって良い機会となります。
私の教室では、年が明けてから、録画によるピアノ発表会を開催することになっています。
生徒さんのうち数名は、既にその準備に取りかかっています。
この困難な時期にあって、テクノロジーが私たちの音楽活動を支えてくれていることに、心から感謝しています。
そうすることによって、この難しい時期にあってさえも、ステージ演奏が許される時期が再び到来する日まで、私たちのピアノに対する情熱と興奮は、決して薄らぐことがありません。
グランドタイムの頂点 2020年12月3日
今日は生徒のお母さまから「オーディションに合格した!」という嬉しい知らせを受けました。
その子が通う学校の合唱祭でピアノを担当する伴奏者が、一人だけ選ばれるというものです。
まずは、「お目出とうございました。」
お母さまは「他の挑戦者たちはグランドピアノで、その課題曲を最後まで弾き通すだけの体力がなかった」と仰いました。
だからこそ、この楽器が「グランド」と呼ばれているのです。
オーディションを受けた全ての生徒さんに、努力を称えて拍手を送りたいと思います。
グランドピアノはパワフルな楽器ですから、弾きこなすためには強靭な指と、腕の力をコントロールする技術が必要とされます。
今回合格した生徒は、はじめのうちは、和音を弾くときに小指で豊かな音を出すことが出来ませんでした。
ところが、その子は自分の弱点を克服すべく、驚異的な集中力をもって練習を重ねました。
今回のオーディションのために、彼は2週間のちに5回ものレッスンを受けました。(うち一回はオンライン。)
彼は今回の結果と称賛に値しますよね!
だからもう一度言います。「お目出とうございました!」
カブリオールのまなざし 2020年11月30日
18世紀の欧州、ロココ文化が華やかになった頃に大流行した家具のデザインに、カプリオールというものがあります。
カブリオールのピアノに魅せられていた生徒のご家庭が、今日、ヤマハYUS5Mhcというアップライトピアノをご購入になりました。
このモデルの脚のデザインは、動物の脚をモチーフにした緩やかなS字を描く曲線による優美なものとなっています。
カブリオールレッグ、カブリオレレッグなどとも呼ばれますが、これらはいずれも、「弾む」「跳び上がる」という意味のフランス語による舞踏用語です。
カブリオールの語源はイタリア語のカブリオーラ(雌鹿の跳躍)が由来であるといわれ、17世紀ごろのフランス家具には、既にこの原型が存在していました。
YUSシリーズはもともとヤマハの上位機種で音質やタッチも優れているため、今回のご購入にあたっては、黒塗りの同ランク機種とずいぶん迷われたご様子でした。
YUS5Mhcはデザインがひときわオシャレで、「猫脚に魅了されてしまった」というのが決め手になったそうです。
なぜか日本では、「雌鹿脚」ではなく「猫脚」という言葉が定着しています。
素敵な カブリオレレッグピアノ の到着が待ち遠しいですね!
賞の価値とは? 2020年11月15日
昨日は、ソロアンサンブル祭という音楽イベントが開催されました。
これは、関東地区のインターナショナルスクール規模で行われる恒例の年間行事です。
しかし、オンラインで実施したのは今回が初めてでしたので、実験的な側面もありました。
東京、神奈川、千葉、埼玉より多くの生徒さんが参加されていたのを見て、嬉しい気持ちになりました。
夜遅く、電話の着信音が鳴りました。
その知らせから、三つの嘆息が起きました。
まず、私の生徒の一人が「金賞」に輝いたことで、本人が興奮気味でした。
次に、お母さんが「ヒャー!」と叫びました。
最後に、私を感動させたものは、生徒の次の言葉でした。
「もし私が金賞でなく銅賞しか取れなかったとしても、先生に対する私の感謝の気持ちに、何ら変わりはなかったでしょう。」
中世の電気 2020年11月4日
チェンバロという楽器を、皆さんはご存知ですか?
グランドピアノに似た形ですが、あまり重くないため、16世紀の演奏会時には持ち運ばれていました。中世に発展した鍵盤楽器で、現代のピアノの先祖と言える楽器です。
ところで、この楽器は、タッチによって強弱をつけることが出来ません。
電子ピアノで練習している生徒さんから、次のような質問を受けました。
「じゃ、チェンバロにも、電気で音量をコントロールするボタンがあったんだよね?!」
ルートヴィッヒ生誕248年周年?! 2020年10月30日
11月に企画されている演奏会(オンライン)に向けて、生徒さんたちは練習に熱がこもっています。
さて、今回の演目のひとつであるベートーヴェンソナタは、新約聖書の異名を取るほど、西洋音楽史の中にあって重要な地位にあります。
同作曲家については、多くのエピソードが広く語られてきました。
特に、今年はベートーヴェン生誕250周年記念ということで、愛好家の方々にとっては特別な年ですね。
「同作曲家は1770年12月16日に、ドイツのボンで生まれた」という説は、広く信じられています。
しかし、1770年12月17日に洗礼を受けたという記録が教会にあることを除いて、彼の出生を裏付ける資料はありません。
1772年オランダのズトフェンで生まれたという説もあります。
ベートーヴェンは「自分が1772年生まれ」と公言していました。
彼の父親が息子を「第二の神童」(モーツァルトが神童と称えられたことに対抗して)として売り出すために、出生年を2年誤魔化した(実際は8歳なのに6才と偽った)という話も、真偽は別として有名ですね。
もし「1772年誕生説」を支持するとなると、「1770年誕生説」を裏付ける「洗礼証明書」がベートーヴェン本人のものでなかったことになります。
「ベートーヴェン誕生前に亡くなった同姓同名の長兄のもので、それを2年後に弟が引き継いだ」とすることも出来なくはないですが、「長兄は1769年に誕生後まもなく亡くなっている」ということからすると、時系列的に無理があります。
2017年にズトフェンでは、ベートーヴェンの両親が滞在した宿屋のあった通りの再開発を行い、その際、文化財の発掘作業が行われました。
そのときに、「ベートーヴェン生誕の謎を解く手がかりが見つかるのではないか?」と期待されたのですが、彼の1770年ボン生誕説を覆すほどの有力な遺物は発見されずに終わりました。
したがって現時点では、1772年オランダ・ズトフェン誕生説を肯定する論拠は乏しいです。
しかし、それ以前に1770年誕生説を否定する論拠も存在しないのです。
知り尽くされているように思われがちな音楽家たちに秘められている謎は、まだまだ沢山ありますよ!
防音・防菌 2020年9月30日
 当ピアノ教室は、先月末に、全部屋の除菌清掃作業、および噴霧消毒作業を実施いたしました。
感謝なことに、三人のスタッフは、とても丁寧かつ心の行き届いた作業をして下さいました。
彼らがレッスン室に入った時、「おおっ!」という叫び声が聞こえました。
「お、音が聞こえない!」「驚きだ!」「「どうして?!」と、口々に言いました。
その場面がおかしくて、私は内心笑ってしまいました。
これからは、綺麗な防音室の中でピアノ演奏を楽しむことが出来ますね!
ダンブルドアの奇跡 2020年8月30日
リムスキー・コルサコフ(N. A. Rimsky-Korsakov)の作品に、The flight of bumble bee(熊蜂の飛行)というものがありますが、じつはbumble bee とはクマバチではなく、ドイツ語で言うところのマルハナバチ(hummel)の英名なのです。ですから、訳としては「マルハナバチの飛行」が正しいということになります。
ディズニーの『くまのプーさん』の挿絵に、ハチミツ壷と共に描かれる可愛い蜂は、色パターンの理由により、「ミツバチではなく、マルハナバチなのでは?」との指摘があります。西洋文化の中で、マルハナバチが親しまれていることが窺えますね。
また、ハリー・ポッターシリーズに登場するホグワーツ魔法学校校長のアルバス・ダンブルドアの「ダンブルドア(Dumbledore)」は、古いデヴォンの言葉で「マルハナバチ」を意味します。作者のJ・K・ローリングは、音楽好きで鼻歌を歌いながら歩き回っているイメージを、「ダンブルドア」と名付けたのだそうです。
デンマークのスポーツメーカー「ヒュンメル」は、このドイツ語(発音はデンマーク語に従う)を社名としています。1923年、ドイツ・ハンブルクで、メスマー兄弟がメスマー社(Messmer)創業し、雨の中のサッカーの試合からヒントを得て、泥の中でも滑らないスタッドのついた靴を発案したことにより「今まで不可能であったプレーを可能にした」という点と、「マルハナバチは身体が重いために飛ぶことができなかったが、努力を重ねてついに飛ぶことができるようになった」という逸話を組み合わせて、ブランド名に「ヒュンメルhummel」と命名しました。
「マルハナバチの飛行は航空力学上不可能」とされた時代がありましたが、現在は、レイノルズ数や動的失速(dynamic stall)を考慮に加えた計算によって、かつては、飛行能力の謎とされていた事柄が解明されています。
さて、ヨハン・ネポムク・フンメル(Johann Nepomuk Hummel, 1778年11月14日 - 1837年10月17日 )というスロヴァキア(当時のハンガリー)出身の音楽家の名前も、実は「マルハナバチ」という意味なのです。
フンメルは、ベートーヴェンの葬儀において、棺を担いだ人物であり、故人の追悼演奏会においては、ベートーヴェンの意思を引き継いで、多くの即興演奏をやってのけたほどの実力を持っていた音楽家です。
モーツァルトにピアノを、ハイドンにオルガンを習ったフンメルは、30代にして名声に翳りが出て来ます。59歳にして世を去った彼の人生の背景については、幾多の興味深いものがあります。
ピアノを学ぶにあたって、年齢、経済、体格、才能、所有楽器、練習時間、周囲の理解など、障がいとなる問題を全く持たない人は、殆どいないのではないかと思います。
しかし、マルハナバチの重い身体は、自然界の力学に逆らって空中に上がり、遂には、「飛行」という偉業を成し遂げました。
私たちも、マルハナバチのように、人々に「不可能」と言われても、尚、努力し続ける強さと、音楽に対する情熱を持ち続けたいものですね!
Un, Deux, Trois – Flats・・・ふらっと、ふらっと、ふらっと・・・ 2020年7月30日
作曲家はそれぞれに豊かな個性を持っていますが、エリック・サティは音楽史上、最大の変人(?!)であったと言われています。
今日は同作曲家による「三つのサラバンド」(Trois Sarabandes)についてお話ししたいと思います。この曲は、かの有名な「ジムナペディ」より少しだけ早い時期に創作されました。
Trois(トロワ)というのはフランス語で「三つ」という意味です。
さて、サティは調性や拍子記号、遂には小節線まで廃止することを実行した作曲家ですから、各音符に振られた臨時記号というものは、絶対的な意味を持ちます。
伝統的な和声理論に基いて書かれた曲であれば、その臨時記号が何の音から派生したものか、音楽を専門に学んだ人なら容易に見抜けます。
つまり、その音が鍵盤上で同一の場所に位置するとしても、例えば、それが「Eのシャープ」であるのか、「Fのナチュラル」なのか、「Gのダブルフラット」なのか、「Dのトリプルシャープ」なのか、旋律の動きや和声進行より、その記譜の根拠を知ることが出来るのです。
しかし、サティの「三つのサラバンド」の作曲法はその範疇にないため、それが困難であると言えます。演奏はいたって簡単です。もし、これが異なった臨時記号を用いて書かれていたとすれば、初見で演奏出来る人は非常に多いことでしょう。
実は、さっきから第一番の冒頭部分を数小節弾いてみているのですが、「その臨時記号がそれでないとならない」という理由を解析することが出来ませんでした。
それで、次のような無謀な結論に至りました。
即ち、サティは、簡単な曲をあえて難しく見せるために、或いは、演奏者が譜読みで大変な思いをするように、わざと分かりづらい臨時記号を選択したのではないか?ということです。
彼の奔放なスタイルは当時の批評家たちから酷評を受けました。しかし、彼は、彼の後に生まれた音楽家たちに、大きな影響を与えることになりましたね!
ダブルキャスターの向き 2020年6月29日
皆さん、こんにちは。
グランドピアノは、キャスター(車輪)の向きによって、音が変わるということを、皆さんはご存知でしたか?
「外側」に向けた方が音質が向上するため、コンサートホールでは、殆どの場合、車輪の向きはそのように設置されます。
しかし、当教室のグランドピアノは、あえて「内側」に向けています。
移動する時に、設置の人から「どちら側に向けますか?」と聞かれました。
このピアノはダブルキャスター付のセミコンサートグランドなので、シングルキャスターのモデルの比にならないほど、それによる違いが明らかになるはずです。
(グランドピアノの脚に付いている車輪が一個ならシングル、二個ならダブルキャスターです。)
しかし、レッスン室の空間ということを考えると、ホールで得られる体感より、私は「地震対策」を優先しました。
同じ理由から、インシュレーターも音質優先の木製から、耐震性に最も優れた材質の物に交換しています。(音響を最優先するのであれば、インシュレーターを敷かないことです。)
ショパンコンクールでは、複数の演奏者が変わるたびに、ピアノが変わるため、そのことが疎かにされていたことが取沙汰されましたね。そのことにより、演奏者の技術を上回るほどの変化が起きることはまずないでしょう。
しかし、それがピアニストの単独リサイタルであったなら、やはりその場に最高の音を求めて、芸術家はステージ上にあるピアノのキャスターを、外側に向けることでしょう。
当教室のグランドピアノは、安全上の理由を最優先して、地震が来ても横滑りをしないよう設置してあります。
カシューナッツのピアノを弾こう! 2020年5月29日
「どうしてピアノは黒いのか・・・?」
皆さんは、こんなことを考えたことがありますか?
19世紀前半までに製造されていたピアノの多くは、木目調でした。
18世紀にあっては、ピアノの上蓋や側板が、天使や植物などで彩られているものが多いですが、それは、「そのような装飾を通して、音楽以外の教養や趣味の高さをアピールする」という意図があったからです。
18世紀から19世紀にかけては、「金色の縁取りがなされる」など、装飾に手をかけたピアノも沢山作られました。
日本に最初にピアノが持ち込まれたのは、今から195年前の1823年(文政6年)のことです。
バイエルン王国(現ドイツ)の医師、シーボルトが、この年に長崎の出島に運び入れました。
塗装の歴史をみると、1800年ごろまでは木目で、表面には、ニスが塗られただけだったようです。その後、漆(天然のラッカー)が使われ、次第に、色が黒くなって行きました。
日本で製造された初期の黒塗りピアノの塗料には、大概、日本の伝統工芸の漆(うるし)が使われています。
恐らくですが、「湿気の多い日本の気候は、欧州と同じ木目仕上げは適さない」と考えられたからでしょう。漆は湿気に強く、しかも高級感があるため、最適な塗料と言えますね。
その後、ヤマハとかカワイ等がピアノ生産を競い合う中で、木目調も製造されていましたが、「木目調のピアノを作るには、薄く削いだ木目の板をピアノの表面に貼り付けて行く中で、ピアノ全体の木目模様を合わせる手間がかかる」一方、「黒いピアノでは木目を合わせる必要がない」という理由より、1920年以降は、ニトロセルロースのラッカーが塗料として用いられるようになります。
1950年頃からは、カシュー (1950年にカシュー株式会社が発明した合成塗料で、カシューナッツを原料にしたもの)が世界的に使用されるようになったので、世界中のピアノの黒の塗料の供給は、日本のカシュー社が行っていたということになります。カシューは漆に近いもので、湿気に強く、耐久性もあり、見栄えも良いため、高価な漆に代わり、瞬く間に、世界中のピアノの塗装に使われるようになったのです。
その後、石油化学の発達に伴い、ポリエステル等の黒色塗料の品質が向上し、同時に、二つのメーカー(ヤマハとカワイ)が生産コストを下げるために採用した黒塗りのピアノは、高度成長期の急速な需要の増加に応えるべく、非常な勢いで人々の間に普及してゆきました。
現在、木目調のピアノも製造・販売されていますが、多くは黒いピアノに比べ割高です。また、塗装が薄いため、外からの影響を受けやすいようです。ですから、外観、音質の両方に関して、メンテナンスをしっかり行う必要があります。
ところで、日本のメーカーが採用した「黒」が、何故、国際的に定着したのかということについては、まだ疑問が残ります。何故なら、カシュー塗料は「透明の場合、少し茶褐色になる」ということを除くと、色選択がほぼ自由に出来たからです。
今、数名の生徒さんがピアノのご購入に関してお悩みです。そのひとつが塗装です。黒にしようか、木目調にしようか、白にしようか、最近はクリスタルという選択までありますから、迷ってしまいますよね!
不思議なバッハ 2020年5月1日
バッハ(Bach)と聞くと、多くの方は、J. S. Bach(ヨハン・セバスティアン・バッハ)を真っ先に思い浮かべられることでしょう。
長男のW.F.Bach(ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ)や、次男のC.P.E.Bach(カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ)、七男のJ. C.F.Bach(ヨハン・クリストフ・フリードリッヒ・バッハ)と九男のJ. C. Bach(ヨハン・クリスチャン・バッハ)も有名ですね!
私は、P.D.Q Bachという名前を初めて見たときに、彼が誰であるのか、また、P,D,Qが何という名前の略なのか分かりませんでした。
P.D.Q.Bachはヨハン・セバスチャン・バッハの21番目の子どもで、1807年5月5日、バーデン・バーデン・バーデンにて死去したとなっています。彼の墓に「1807-1742」、即ち、生年と没年が本来の表記と逆になっているのです。CDのジャケットにも、P. D. Q. Bach (1807–1742) と書かれています。
この謎に満ちた人物については、知れば知るほど愛着が沸いてきました!皆さんは、この不思議なバッハをご存知ですか?!